第17章 帰
会計のときだけ、手を解いて。
帰り道は、指を絡めて。
来た道とは違う道程を、ぶらぶら歩く。
「今日の内に仕度する?明日にする?」
何気に声をかけて。
その意見を尊重するつもりで。
「明日……やっぱり、今日」
「食材置いたら、荷物取り行く?」
「このまま、行っても、いいですか?」
「……え、俺、行っていいの?」
「勿論です」
「いきなり、お邪魔していいの?」
「駄目なんですか?」
誘われてる?
試されてる?
イヤ、待て銀時。
自分で我慢するって言っただろ。
家に誘われたのは、そういう意味じゃないだろ。
落ち着け、俺。
「玄関の外で待ってるわ、俺」
『変な坂田さん』って笑うけど。
お願いだから。
300円あげるから。
もう少し、危機感を持ってくれ。
指を絡めて歩く、こんな穏やかな時間も。
昨夜の行為を思えば、熱が上がる。
俺の方が歳上で。
大人な男を演じる側。
限界まで我慢はするけど。
限界って、いつだ?
朱里ちゃんが俺を『欲しい』タイミングと。
俺が朱里ちゃんを『欲しい』限界が。
近いとは限らない。
堪えろ、銀時。
男を見せろ、銀時。
甲斐性無しの男にだけはなるな。
「あそこ」
声と、指先に視線を向ければ。
洒落た感じの建物が目に入る。
万事屋から数百メートル。
言葉の通り。
こんなに近かったのか。