第17章 帰
「すぐにお登勢様に、お知らせしなければ」
まず、慌てた様子のたまを制止する。
「みんなには、まだ内緒にしといてくれ。バァさんには、夜、挨拶に行くわ」
「銀時様が、そう仰るなら」
そう言って、たまは笑う。
「朱里様、銀時様をお願いいたします。私とも、仲良くしていただけると嬉しいのですが………朱里様?どうかなさったのですか?」
そこで気付く。
俺の着物の袖を掴んだまま、身動きしない朱里ちゃん。
「オイ、朱里ちゃん?」
顔、真っ赤。
目、潤んでるぞ。
「ごめんなさい。その、嬉しくて」
照れて俯いた顔。
他の男の前で、しないでね。
「たまさん、こちらこそ、よろしくお願いします」
たまに向けた笑顔さえ、焼けちまうんだから。
連れて歩くのも大変だ。
「銀時様と朱里様は、ラブラブ、ですね」
「………そうだな」
「お二人とも、心拍数が上昇していますよ」
「お前が遠慮なしに言うからだろーが。そりゃ、恥ずかしーわ」
「初々しくて、甘酸っぱいです。お腹いっぱいです」
「データに書き加えとけ」
「了解しました」
夜、お待ちしていますと付け加えて。
たまはレジへと歩いて行った。
「そーいうことで、夜、ちょっと付き合ってくれ。ちゃんと、紹介したいんで」
「はい……」
「あーもー、泣かないの。銀さん、ハンカチ持ってないよ?」
真っ昼間の、加工肉売場で。
こんな状況に陥るなんて。
袖で、涙と鼻水拭って。
やっぱり、色気の欠片も見当たらねェけど。
「手、繋ぐ?」
差し出した掌を握る温もりは。
もう、手放してやれそうにない。