第17章 帰
スーパーに着いても、放し難い手。
俺が籠を持って。
商品を朱里ちゃんが選ぶ。
昔あった、食器用洗剤のCMみてェに。
手繋いだままで。
家に帰るまで。
そうできたら、どんなにいいか。
実際は、自動ドアの前で。
互いの手を放して。
俺が籠を持って。
商品を朱里ちゃんが選ぶ。
誰に咎められるわけでもねェのに。
俺が一歩先を歩く。
面倒な奴に見られたくない。
イヤ、見られてもいいんだけど。
手を繋いでようが。
肩を抱こうが、腰を抱こうが。
「俺の女」って言えばいいんだけど。
変ないざこざは御免被りてェ。
折角、一緒に過ごせるなら。
誰にも邪魔されたくねェんだ。
まぁ、そんなこと考えてると。
よからぬことが起こるもんで。
結局、面倒なことになるのが。
落ちなんだけれども。
「銀時様」
振り返ると、たまが立っている。
「こんな時間にお買い物なんて、珍しいですね」
機械らしからぬ驚いた表情で。
「新八様と神楽様も、ご一緒ですか?」
「イヤ、今日は居ねェよ」
「パチンコ、勝ったんですか?」
「オイ、俺の稼ぎはパチンコ任せか」
「そういう訳ではありませんが。銀時様自らがお買い物なんて、何か理由があるのかと」
たま、お前、俺のこと何だと思ってんの?
銀色の玉打って稼いでると思ってんの?
「………そちらの方は?」
たまが、不意に俺の後方に視線を向ける。
「突然、失礼しました。お登勢様のお店でお世話になっている、たまと言います」
律儀なお辞儀を横目で見てから。
振り向いて、朱里ちゃんの背中に手を添える。
「たま、俺の彼女の朱里ちゃん。今後、万事屋に出入りする機会が増えるから、覚えといて」
俺の言葉に驚いたのは。
たまと。
朱里ちゃんと。
俺自身。