第17章 帰
「オムライスが、いいな」
あの日の記憶を探るみたいに。
あの日の晩餐を所望する。
「オムライス、好きなの?」
「普通です」
「普通なのに、オムライスでいいの?」
「はい」
「……欲がないねェ」
「坂田さんのオムライスに、意味があるんだもの」
「ん?」
「胃袋、鷲掴みの威力」
「マジでか」
昼寝のあと。
結局、買い物に行くことにして。
夕飯のメニューを考えながら。
手を繋いで、スーパーまでの裏道を歩く。
「休み、いつまでだ?」
「明後日?」
「何で疑問系?」
「一緒に過ごせるのは、明日まで」
何、その『次の予約が入ってます』みたいな物言い。
許しませんよ、そんなん。
銀さん、傷付くだろーが。
「明々後日から、任務」
「明後日は?」
「準備したり、屯所に行ったり」
「非番だろ?」
「次の日、早いから」
「ふーん」
「初めて……任務に行きたくない」
「…………」
「坂田さんの傍にいたい」
「………いれば?」
「朝、早いし」
「んな理由、どーでもいいわ。離れ難いなら出発ギリギリまで、傍にいればいーんじゃね?」
今日の内に、全部の仕度して。
それ以降の時間、俺にくれよ。
依頼もないし。
新八も、神楽も、定春もいない。
照れ臭くて言えねェけど。
離れ難いのは。
たぶん、お互い様。