第16章 糸
その日。
俺と朱里ちゃんの『初デート』は。
万事屋の中で、のんびりと過ごすだけの。
質素なモノ。
二人でテレビ見て、昼飯食って。
洗濯物を仲良く畳んで。
揃って昼寝をして。
新八と神楽以外が、四六時中、家に居るという。
暫くぶりの、感覚。
以前は二泊三日だろうと。
意識すること、無かったけどねェ。
昼寝ひとつで、この有り様とは。
「そろそろ休憩しよーや」
簡単な縫い物をしている朱里ちゃんに声をかけて。
畳にごろりと寝転ぶ。
「陽気がいいから、ちっとだけな」
手招きして、隣を勧めて。
左腕の枕を進呈してみた。
戸惑いながらも、頭を乗せて。
「恋人同士、みたい」
そう言って、顔を紅くした。
みるみる染まる頬を見て。
悪戯心が芽生える。
「恋人同士、だろ?」
「……はい」
「…………んな紅くなったら、こっちが恥ずかしいこと言ったみたいだろーが」
「坂田さんも、紅い」
「照れるだろ、普通」
「はい」
「だから、その顔が…」
「はい?」
「俺にこーゆー顔、させてんの」
顔を見せたくなくて、胸に抱き寄せる。
胸元からクスクスと笑い声。
「ありがとう、坂田さん」
『大好き』と、微かに聞こえて。
朱里ちゃんは、あっという間に夢の中だ。
昨夜に引き続き、寝落ち?
それとも、俺と言う抱き枕の成せる業か。