第16章 糸
それまで、我慢するって。
男の俺には、結構な努力と忍耐を要する。
解っちゃいるが。
単純に躯を差し出されて。
それを頂戴するなんて、風情に欠ける。
強引に抱くのは簡単。
優しかろうが。
激しかろうが。
手荒だろうが。
絶頂を迎えて、終わる。
そんな抱き方、もっと若けりゃいいけどね。
俺ァ、そういうの、もう卒業しないと。
一夜限りの遊びなら、未だしも。
気持ち良くなって、終わりじゃなくて。
その手前から、気持ち良くしてやりてェの。
自分より、相手。
俺も大人になったわ。
そうやって考えるようになったんだから。
がっつかないで、我慢できるんだから。
イヤ、あの……自信ないけどね。
でも、朱里ちゃんと俺の『ハジメテ』は。
俺が勝手に大事にしてやりたいと、思ってるんです。
え、古い?
別に古臭くてもいいよ。
『心』の次に『躯』が『欲しい』って思ってくれれば。
『坂田銀時』の『全部』を。
『頂戴』じゃなくて『欲しい』って。
そう求めてくれれば。
新しいとか、古いとか、関係ねェと思うワケ。
だって、男は常に欲しいんだからさ。
それ、女のコからの申し出だったら。
一番美味しい、食べ頃だろ?