第15章 名
昨日の余韻が解けてても。
強引に。
抱いてしまおうかと、思ってた。
その気にさせてしまえば。
簡単なことなんじゃないかと。
女のコの『ハジメテ』が。
大事だとか、ほざいたくせに。
自分の中の劣情に軍配を上げて。
俺のモノにしたいと。
俺のことを。
もっと欲しいと。
思わせるために。
俺が。
もっと先を欲する前に。
本当は、朝飯よりも。
食べたいんです、銀さんは。
その、紅い唇から。
全てを、堪能したいんです。
「朱里ちゃん」
「何でしょう?」
「目玉焼き、俺に焼かせてくれ」
内心では、どう思っていようと。
当面は、この距離のままと覚悟して。
素知らぬフリでフライパンを持って。
心地良い、隣に立つ。
爪も牙も隠して。
彼女と断言できない女のコと。
仲良く並んで。
腹を満たすため。
料理をしちゃってるわけだ。
満たしたいのは腹じゃなくて。
もっと別の何か。