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【薄桜鬼 トリップ】さくら玉

第8章 1864年【後期】決意の時


こんな時間にわざわざ起こされて呼び出された夢主(妹)を心配して起きていた千鶴は、先に帰ってきた夢主(姉)の様子がいつもと違うように見えて、さらに夢主(妹)が心配になった。

気遣わしげに寝床から見上げる千鶴に対し、夢主(姉)は柔らかい笑みを向ける。

・・・お姉ちゃんが笑ってれば大丈夫

以前、夢主(妹)が言っていた言葉を千鶴は思い出し、その笑みに少し安心をした。

「ありがとう。千鶴ちゃん。大丈夫だから眠ってて。」

そう夢主(姉)に言われて布団に寝転ぶ。

寝転んで目を閉じると、そっと夢主(姉)は部屋を出て行ってしまった。


それから大分時はすぎてから、夢主(妹)がふわふわとした足取りで帰ってきた。

「おかえりなさい!大丈夫だった?」

やはりずっと起きていた千鶴は、夢主(妹)が襖を閉めきらないうちに声をかける。

「うん。千鶴ずっと起きてたの?」

「なんだか心配で・・・」

そんな千鶴の優しさが、一気にいろんなことが起こって情緒不安定になっている夢主(妹)の胸に染み渡り、再び目頭に涙が溜まった。

「夢主(妹)ちゃん?」

涙を浮かべた夢主(妹)に、いよいよ心配する心が爆発しそうな千鶴は、ぱっと起き上がって、やっと襖を閉め切った夢主(妹)をぎゅう、と抱きしめた。

「千鶴・・・」

先程まで土方の腕の中に居た夢主(妹)だが、土方とは別の、柔らかく細い千鶴の感触が、くすぐったくて嬉しくて暖かくて、充実した屯所生活を送っていたと思い込んでいた自分も、すごく無理をしていたことに気づかされる。

「ありがとう。大丈夫だよ。」

そう言って微笑めば、その微笑は無理をして作られたものでは無いと分かり、千鶴は少し安心をした。

「お姉ちゃんは?」

「さっき帰ってきたけど、すぐ出て行っちゃって・・・」

そっか・・・と呟くと、千鶴はまだ心配そうに夢主(妹)の様子を伺っている。

「あのさ。千鶴にも話せる日が来ると思うんだ。それまで話せなくてごめんね。」

千鶴にはすぐに話したい。

でも、話せない。

真摯に言えば、千鶴は分かってくれるはずだ、と、あえて言葉は濁さずそう言えば、「うん」と、花が咲いたような笑顔が返って来た。
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