第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
しっかし…みんな体力はんぱないなぁ。
負けてらんないね!うし!がんばろっ!
天王山へ長州の残党を追っている…という感覚よりは、あまりの走り具合に、マラソン大会を控えてる陸上部の気分になっていた夢主(妹)は、いきなり立ち止まった土方の背中に顔面を激突させた。
「す、すみませんっ」
おでこをおさえながら土方に謝ったが、土方は前方を見据えたまま動かない。
そのまま土方の視線を追って前方を見た夢主(妹)は、
「あ~!」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を塞いだ。
あの時の!あいつだ!
土方は前方を見据えたまま、
「どうした」
と、夢主(妹)に聞いた。
「あいつ!池田屋にいた変な殺気の人です!やっぱり今日も変!」
新選組の行く手を阻むように、たった一人で道を塞ぐ男が前方に居た。
男は背が高く金色の髪をした、一風変わった雰囲気を醸し出している。
池田屋か。夢主(妹)はたしか総司といたっつってたな。
ってことは、総司が手も足も出せなかったって奴か。
変な殺気の…たしかにな。
緊迫していたはずなのだが、夢主(妹)が言い放った「変な殺気の人」という表現が、まさにぴったりはまっていて、土方は思わず笑ってしまった。
たしかに変な殺気だな。
と、前方を睨む。
その時、勢い余った一人の隊士が、先程から睨むでもなく怯むでもなく、こちらを見たまま殺気を放つ「変な殺気の人」へ向かって飛び出して行った。
「わあ!だめ!!!」
夢主(妹)がそう言ったのも時すでに遅く、「変な殺気の人」はその隊士をあっけなく斬り捨てた。