第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】
みんな足速いなぁ…
刀二本も差してるのに、よくこんなに走れるよね。
私もお姉ちゃんみたいに毎日走りこみしようかな。
そんなことを思いながら土方の後について走る夢主(妹)は、今日は隊服は着ていない。
山南からは、「私の隊服を」と今回も言ってくれたのだが断った。
池田屋の時は、暗い部屋で浪士と間違われない為に借りたのだが、正式な隊士でもない自分が大切な隊服を着るのは気が引けて仕方ない。
平隊士の中では、夢主(妹)の実力は一目置かれ始めている為、例え夢主(妹)が隊服を着ていたとしても、それに対して異論を唱える者などいない。
だが、「遠慮します」と断った夢主(妹)に、山南は何か思うことがあったのか、それ以上は勧めなかった。
隊服暑いし、山南さんのじゃでっかいし、動きづらいから…なのが1番の理由だけど…。
びっしょりと汗をかいている隊士達を見ながら、夢主(妹)は改めて断ってよかった、などと思っていると、暑いこの時期に真っ黒な装束を身にまとって、隊士達とは違って、汗ひとつかいていない様子の山崎がいつの間にか合流した。
そして、土方に長州の動向を報告し終えると、再び走って消えて行く。