第4章 疑惑
涙に濡れた幼馴染の頬を拭い、
ゆっくりと口角を上げる。
「でしょう?」
「姫…」
「膝を上げて。【王の楯】」
【王の楯】は、王の門家から
選ばれる、王族を守る楯だと
国民には伝えている。
だがその本質は、王族からの
汚い命をしなやかにこなす、
王からの兇手なのだ。
「今まであなたが殺した人の
顔、声、身の上。覚えている?」
「…もちろん。相手が私に
心を許すまで呑みましたから」
「うまくいけば、あなたには
もう人を殺す必要がなくなる」
「…昔からあなたはそうやって
私の心を動かす」
「最後の我儘だから。お願い」
ハビル様の硬い体を抱きしめて、
醜い命令を下す。
「私に協力しなさい」