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好きなだけじゃダメなのか

第4章 疑惑


「私の文を受け取ったとき…。
彼はどんな様子でしたか」
「顔色を変えず、私に向かって
『ありがとうございます』とだけ」

やはり彼は私が文を送ることを
想定していたのか。

「姫、何をお送りしたのですか?」
「これですよ」

封を切り、中から出てきたものを
ハビル様に見せる。

「…菖蒲と、薔薇?」
「菖蒲は新サラントの王子の印。
薔薇はハントネの王女の印」
「それはわかっておりますが…
どうしてそれをレオン王子に?
…まさか」

菖蒲と薔薇を黒い紐で束ねた絵。
それが何を意味するかは、聡い
ハビル様ならすぐにわかるだろう。

「手を組んで、祖国を守る」
「おやめください」
「控えよ、【王の楯】」
「畏れながら申し上げます」
「控えよ!」
「控えませぬ!」

ハントネと新サラントが全面戦争に
最も近いところにいるのなんて、
大将軍家の嫡男のハビル様なら
痛いほどわかっている。

だからこそ私は、他の誰でもなく
ハビル様に文を託した。

「私は…姫に死んで頂きたくない」

私の前に跪き、絨毯に涙を落とす。
その銀髪を撫で、手を滑らせて顎を
持ち上げる。

「王族が死なないようにするのが、
【王の楯】の役目でしょう」
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