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好きなだけじゃダメなのか

第4章 疑惑


大将軍屋敷は王宮のすぐ隣にあり、
直系一族が住んでいる、王宮よりも
ふた回りほど小さく、将軍屋敷よりも
ひと回りほど大きい屋敷だ。

ハビル様の部屋は二階の突き当たり。
小さい頃から何度も通っているため、
目を瞑っていても来れるほどには
慣れている。

コンコン コン

ハントネ王族流のノックをして、
中からの返事を待つ。

「姫」

扉が開き、略装ながらもきちんと
右に佩刀したハビル様が現れる。
右側の佩刀は、ハントネ王国では
相手への敬意の表しだ。

「お待ちしておりました」

その目元には隈があり、疲労の色が
濃かった。

「お疲れですか」
「…ええ、まぁ」
「将軍がお倒れになりましたからね」
「はい。大将軍家もバタバタです」
「ご苦労様です」

そんな話をしながら、ハビル様は
お茶を淹れてくれる。

「お好きでしょう?」
「ラ、ですね」
「ええ。王妃様の作り方を特別に
教えて頂きましたので、姫には
飲み慣れた味だと思います」
「いただきます」

カラカラになるまで乾燥させた
茶葉を煮出し、そこに牛の乳を
混ぜたものがラだ。
母上がよく作ってくれていたのを
思い出す。
ハビル様に作ってもらったラは、
彼が言う通り母上のものと同じ
味がした。

「美味しい」
「よかった…」
「で。お手紙は?」
「…こちらです」

白く薄い封筒。
菖蒲の封印。
間違いなく彼からだ。
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