第2章 出会い
「僕、王位を継ぎたくないんだ」
「…どうして?」
お互い王宮に帰りたくなくて、
そのまましばらく話をしていた。
「…何千万という民の命が、こんな
僕の両手に預けられるなんて…。
怖くてできないよ」
「それは、みんな思ってたはずです」
「え?」
「レオン王子のお父上もお祖父様も、
そのずっと祖先も。みんな不安です」
「…そうなのかな」
「でも、やらなきゃいけないこと。
王の息子として生まれたからには、
民からの税で生きてきたからには、
王として次の世代に尽くすべきです」
「……」
「…すみません、出しゃばって」
「いや、すごく…嬉しいよ」
表裏のなさそうな顔。
コロコロ変わる表情が可愛らしい。
いくつくらいなんだろう?
見当もつかない。
「カノン王女は、強いんだね」
「強い?」
「ああ。すごいよ」
「そんなこと…あっ」
髪に挿していた薔薇の造花が、
風に吹かれて飛んでいく。
「よっと…間に合った」
「ありがとうございます…」
すぐに手を伸ばしたレオン王子に
薔薇を取ってもらう。
「綺麗な花だね」
「王女の印だそうで…全て薔薇なの」
「へぇ!僕の国では王妃が薔薇だよ。
王女は百合だ」
「私の国では王妃が百合です」
「不思議だね。隣の国だからかな」
なぜだろう。
初対面なのに、とても落ち着く。
兄といるかのような、そんな感じ。
いや、兄はいないんだけど。