第1章 誠凜高校入学
「──探しに行く必要はありません。僕は此処にいますから。」
頭上から降ってくる声に視線を上げれば、黒子君がいた。
『──!?///』
急に現れた彼に驚いたが、それより今彼に抱きしめられている形になっていることに驚く。
「…あのままだと探しに出て行ってしまうと思ったので、気付いて貰おうと軽く引いたんですが…紺乃さんが思いの外軽くて、強く引いてしまったみたいです。足、もつれてましたが、大丈夫ですか?」
淡々と“こうなった理由”を説明してくれる黒子君だったが、男への免疫が少ない私は、彼とのあまりに近い距離に驚いて突っ張ねてしまった。
黒子君の腕から逃れ、ある程度距離をとるものの…
上がってしまった心拍数は治まらず、平然を装い『平気。』と、だけ伝えると、いつもの無愛想な顔を作る。
(狼狽えちゃ駄目!余計、恥ずかしくなっちゃう!!)
──この時。赤い頬に手を添え、わたわたと羞恥心と格闘中の私を見て黒子君が微笑んでいたなんて知る由も無い。
その後、練習を始めようとしたリコ先輩に「黒子は僕です」と目の前で発言し、悲鳴を上げられ周囲を驚かせていたのは言うまでも無い。
(目の前に居て気付かれないとか…どんだけだよ。)