第9章 海常高校
「──それでは、これから誠凜高校対、海常高校の練習試合を始めます!!」
選手達がコートへと整列した頃、私はベンチでビデオの録画ボタンを押した。
「…あらららら~!?」
『どーしたんですかカントク…?』
「ちょいと…ヤバいかも!?」
『ぇ?』
「服の上からじゃ全部は見えないけど…フィジカルは完全に負けてるかも…」
『流石、全国クラスってやつですか。』
「こっちも黒子君と火神君がいるとはいえ…あの二人の力がどこまで通用するか…」
『…先輩、あの二人なら大丈夫ですよ。』
「え?」
『先ずは挨拶。無礼な海常さんには、礼儀ってもんを教えて差し上げないと。』
試合合図と共に放たれたジャンプボール。
まずボールを取ったのは海常だった。
「んじゃまず1本!キッチリいくぞ!」
警戒の無いボールの付き方をするキャプテンの笠松幸男さん。
そこへ賺さず気配を消した黒子君が近付き、ボールを見事カット。
笠松さんは持ち前の運動能力で黒子君に追い付くも、不意をつかれたパスに反応が遅れ、後ろから構えていた火神君にボールが繋がった。
そしてそのまま…
「くらえ!!」
“バキャン”とヤケに大きな音をたてダンクがキマった。
私はビデオ片手に、卑しく笑う。
『でかした。』
と言うのも、さっきのダンクで力一杯貫ぬかれたリングは着地した火神君の手にしっかり握られていたからだ。
元々年季が入っていたゴールは、裏側の板が剥がれるようにささくれ立ったっていて、繋ぎであるボルトは酷く錆びついていた。
有る一定以上の負荷を、特定の場所へ集中してかければ絶対壊れる。
そう見抜いた私は、2人にだけに作戦を伝えてあった。
ナメた態度のうちに速攻をかける事。
ダンクする際はリングの左側を狙う事。
──そう。私の言っていた“挨拶”とはコレの事。
(まぁ、こんな簡単に上手くいくとは思ってなかったけど。)
「すみません。ゴール壊れてしまったんで、全面側のコート使わせてもらえませんか?」