第9章 海常高校
体育館に着くと何故かコートは二分されていた。
練習試合が予定されていると言うのに、半分に仕切られた網の向こう側では、部員達が私達に目もくれず練習している。
「『試合を申し込んだ誠凜です。本日は宜しくお願いします。』」
カントクと一緒に海常高校バスケ部の監督、武内源太さんに頭を下げた。
中年によく見られる丸みを帯びたお腹に、生やしっぱなしの無精髭。見るからにズボラで褒められた形をしていない姿に僅かながら眉を寄せる。
武内監督はぽっちゃりとした顎のラインを撫でながら一瞥すると、私達への挨拶もそこそこに片面のコートを見ながら言う。
「今日はこっちだけでやってもらえるかな。」
──は?
ポカンと間抜け面をしている中、カントクだけは畏まった態度を崩さずにいた。
「あの…これは…?」
「見たままだよ。今日の試合、ウチは軽い調整のつもりだが…出ない部員に見学させるには学ぶものがなさすぎてね。無駄をなくすため、他の部員達には普段通り練習してもらってるよ。だが、調整とは言ってもウチのレギュラーのだ。トリプルスコアなどにならないように頼むよ。」
ひらりと手を挙げ背を向ける武内監督。
一言もの申そう。
『感じ悪。』
「同感です。」
「ナメやがって…つまりは“練習片手間に相手してやる”ってことかよ…」
黒子君は眉を寄せ、火神君は青筋を立てて言った。
ちらりと先輩達を見れば、此方も納得のいかない顔。
温厚な先輩達までが眉を寄せている。