第9章 海常高校
『んにゃろぉー!!』
体育館に怒鳴り声が響いてから、数日後。
私の苛立ちが落ち着く間も無く、誠凜バスケ部は海常高校との練習試合の為、神奈川県へと来ていた。
前を先導して歩くリコ先輩と日向先輩の後ろ姿に、一時の癒やしを感じつつ、脳内でイチャツク2人の妄想を繰り広げていると、右隣に並んでいた黒子君が私を挟んだ左隣に並んで歩く火神君へと話かけた。
「火神君、いつにも増して悪いです。目つき……。」
「るせー、ちょっとテンション上がりすぎて、寝れなかっただけだ。」
「…遠足前の小学生ですか。」
見るもの全てにメンチ切ってるような血走った目に呆れ、私は肩に掛けていた小さめのボックスから保冷剤を取り出すとハンカチでくるみ、火神君へと差し出した
。
(因みに大きめのボックス等、重い物は降旗君達が気を利かせて自ら持ってくれている。実に良い奴らだ。)
『少しはマシになるだろうから、コレで目の回りを冷やして。』
文句の無いマネージャーらしい気遣いに、多少の戸惑いを隠せない火神君。
失礼な奴だな、と思いつつ…
『寝不足で試合に…と言うか、黄瀬に負けたら許さない。』と、付け加えれば…
「…それ、私情挟んでねーか?」
と、納得した顔で保冷剤を受け取った。