第8章 番外編 高尾の憂鬱
「っ、はぁ…はぁ…ゼィ…」
ぉ、お、落ち着けー!!
でもって、しっかりしろ和成!!
恋愛に疎い真澄が、何でこんなもん調べてるのかは確かに不思議だ!!
違和感しか無い!!
けど、だからって“キスされたのか”と考えるのは安直すぎやしないか?
そう、俺は最初に言ったよな?
これはきっと、友達の恋愛相談だ。
そうだ。
そうに違いない!!
スマホ片手に内なる自分を奮い立たせていると、『んー…』と真澄が少し身じろぐ。
相変わらず体勢はそのままだったけど、寝言?を言始めた為、起こしてやろうと肩に手を置いた。
途端、
『絶対、ぶっ飛ばす!!』
しゃんなろぉー!!と急に覚醒し、腕を振りあけてきた真澄。
「ちょ、真澄ちゃん!!落ち着いて!!」
『ぇ?ぁ、カズ君、おかえりー?』
「ぁ、あぁ…ただいま。…あー、あのさ、何かあった?」
『ちょっとね。でも、大丈夫だよ?』
(大丈夫、ねぇ。)
「ふーん。」
『あ、もうこんな時間じゃん。カズ君お風呂終わったんだよね?私、入ってくる。』
「ん。りょーかい。」
真澄は机に置かれた少女マンガを纏めると、1巻から順に紙袋へと入れていく。
「…えらく丁寧に扱うじゃん。それ、友達にでも借りたの?恋愛重視な本読むなんて珍しいね。」
『…部活の先輩がね、私は“こういう”事に疎いからって、貸してくれたんだ。』
ふーん。
「“こういう”って…キスのこと?そのマンガ…やたら多いよね。キスシーン…って…え?ΣΣえぇ!?真澄ちゃん…顔、真っ赤…。」
『Σっ!?///き、気のせいダヨ!!やだなカズ君ってば!!そんな…キ、キス如きで、赤くなんて…!!っ、風呂行ってくる!!』
──バタバタバタ!ガチャン!
「…嘘、だろ?」