第8章 番外編 高尾の憂鬱
<高尾視点>
家に帰って、飯食って、風呂上がって…
“今日も疲れたぁ~”なんてオヤジ臭い独り言を零しながら自分の部屋に入ると、真澄が机に突っ伏していた。
季節はずれのコタツに埋まるように上半身を潜り込ませ、顔だけが真っ直ぐ出て、机と対面するように乗っかっている。
頭のすぐ横には数冊の少女マンガと、愛機である彼女のスマホ。
(今日は、一体何だ?)
俺はタオルで頭の水分を乾かしながら真澄の隣へしゃがみこんだ。
真澄は嫌な事があったり、壁にぶち当たったりすると、よくこうなる。
前回は、何だったけ?
あー…、そうだ。
“正しい恩返し”だ。
それと連動で、“護身術”なんかも覚えてたっけ?
鶴の恩返しの絵本片手に『コレしかない!』なんて真剣に言うもんだから、何事かと思ってたら…俺と行くはずだった高校の進路を急に書き換えちゃってさー。
…まぁ、今に至るわけだ。
いっつも自分だけで悩んで解決してくもんだから、見てるコッチはいつもハラハラしっぱなし。
そのせいか、自分でも自負するぐらい過保護になりつつある。
今だって、何の壁にぶち当たったのかが心配で、普段あまり読まない類の少女マンガを開いてるし…ι
(…何だかな~)