第7章 キセキの駄犬
<黄瀬視点*続>
──少し前まで、俺は真澄っちの教室に通っていた。
どうでもいいような、くだらない話を毎日ってぐらいしてて…
“ものぐさ”な真澄っちは、ソレを適当に相槌を打つ。
一声目は凄く嫌そうな顔をするくせに、…性分なんスかね。
何かと助言をしてくれたり、最後まで話を聞いてくれるから、俺にとって真澄っちの隣は心地の良い場所だった。
聞き役だった事もあって、真澄っちは滅多に自分の事を話さないタイプだったけど…
気付けば、本当に何も話さないまま卒業していた。
行く学校も、
やりたい事も、
先の目標も、
何にも知らない。
何も聞かされてない。
あんなに一緒だったのに…
だからスかね?
…凄く、
「…会いたかった。」
でもって、二度と会え無いのかと思って…
「寂しかったんスよ?」
スンと鼻を啜れば、押し返していた腕の力が無くなった。
『黄瀬…』
名前を呼んで貰えるだけで、胸が一杯になる。
(俺…いつの間にか、本気で…)
熱くなった目頭を子供が甘えるように、ぐりぐりと肩へ擦り付けた。
ピクリと身じろぐ真澄っち。
たったソレだけの反応で、こっちの心臓が跳ねて嬉しくなる。
抵抗せずにいてくれる真澄っちに“同じ気持ちなのかも”と期待が膨らんでいく。
赤くなっているだろう可愛い顔を覗こうと少し体を離した。
が…、
『…~っ、コノ馬鹿者がぁ!!///』
感動の再会をブチ壊す威力で足を踏まれた。
「ΣΣ~痛っうぅぅ!!」
余りの痛さにうずくまれば、更に上から踵が降って来て、持ち前の反射神経をフル可動させると、紙一重にソレを避ける。
ダンッ!!と、床を響かせたソレは所謂“踵落とし”と言うもので…
其処に頭があったら…?
と、考えるだけで背筋が凍った。
『誤解を生むような行動は慎めと、何度言えば解る?いっそ、涙がちょちょぎれるまで躾直してやろーか?あ?』
「Σヒィィィィ!…か、感情に流されて、忘れてたっス。」
『てめぇの軽はずみな行動でファンから攻撃受けんのはコッチなんだよ!いい加減学習しやがれ!このッ駄犬がァ!!』
「スンマセーン!!(涙)」