第7章 キセキの駄犬
──そうして現在。
ダッシュで各部活を回り終えた私は、最後の力を振り絞り体育館へと向かっていた。
私に何の恨みが!!とか考えたが…
あの担任の事だから“単に弱みを握りやすかったから”と言われそうだ。
なら、火神が配れや!!とかも思ったが…
期待のエースの練習を妨げられるのも困る。
けれど私だって毎回こんな事をしている程、暇では無いわけで…
結局のところ、改善策はバカガミの学力アップなのだと気付かされてしまった。
『なる程、コレが狙いか…。』
私が奴の為に時間を作って勉強を教えろと?
壁に手を突いてうなだれる。
何か…リコ先輩へのラブラブ、エクスタシーな恩返し生活が、微妙に道を外してしまった気がする。
しかし…
『背に腹は代えられぬ。』
体育館に着くと、黄色い声がキャーキャー響いていた。
扉に押し寄せ、通路を塞ぐ女子達。
彼女達の手元には色紙や、写真集、下敷き、団扇なんかもある。
ぐらりと気が遠くなるのは、前にも同じ光景を嫌と言う程見てきた結果だ。
かと言って此処でモタモタしている場合では無い。
早急にこの事態を回避しなければ、状況は悪化し部活が出来なくなってしまう。
私は携帯を取り出し職員室へ繋ぐと、担任に今の事態を説明した。
「お前、俺を使うとは良い度胸じゃねーか。」
『良いじゃ無いですか。校内駆けずり回ったご褒美として、何とかして下さいよ。』
舌打ちされたが、直ぐに放送が鳴る。
「──体育館に群がってる女子生徒に告ぐ。お前らの行動は部活動の邪魔になる、バスケ部と関係の無い者は即刻その場から立ち去れ。」
流石、陰の権力者。
内容を聞いた女子の半数が、顔を青くして走り去って行った。
けれどまだ半数。
『先生ー、まだ居ます。』
受話器に向かって話せば、またもや舌打ち。
先生、まさか兵長の真似ですか?
まさかの進●ファンですか?
貴方の場合、腹黒すぎて全然トキメキません。
是非やめて頂きたい。
「10秒だ。カウントが終わるまでに立ち去らなかった奴は、生徒指導の俺がみっちり仕置きしてやる。…10、…9、…」
得体のしれない恐怖を感じ取った女子達は、カウントが始まると一斉に駆け出した。
こう言うのって何て言うんだっけ…?
……壮観?