第7章 キセキの駄犬
屋上宣言を禁止されてから数日。
仮入部だった一年生は、カントクの指示により部活前の声だしとして宣言をさせられ、15人から6人へと絞られた。
数が減った事により、各個人へ密度の濃い練習を与える事ができ、出だしは向上。
今日も体育館にはバッシュの摩れる音と、ボールの弾く音が心地良く響いている。
そう、響いて…、“居る”筈だった!
体育館に!!
いつもならこの時間帯は、リコ先輩のお手伝いをしている至極の時!!
なのに!!
『くっそ~、やっぱり時間掛かった~!』
今、私は校内を駆けずり回っていた。
──遡ること1時間前。
部員達より早く来ていた私は、手早くジャージに着替えると、散らかった部室の片付けを始めた。
床やベンチに置きっ放しになった余計な物を整理していると、見覚えのある人物が雑誌の表紙となっていて手を止める。
“月刊バスケットボールマガジン”
偉業全国三連覇、
帝光中、“キセキの世代”特集!!
タイトルは確実にスポーツ誌なのに、女性週刊誌に見えてしまうのは表紙を飾る人物のせいだろうか?
金髪を靡かせ、ボールを持って走る彼の写真は『ジャ●ーズか!!』と突っ込みを入れてしまう程、カメラアングルが良く、キラキラしていた。
(流石、“モデル”と言うべきか…)
興味本位で中を開けば、他にも見知った顔がチラホラ。
1人1人インタビューを受けたのか、プロフィールやコメントが載っている。
週刊誌と言うよりアイドル雑誌だ。
“面白い物を見つけた”とコレだけをベンチに残し、他の物をしまい込む。
大方片付けが済んだと、満足したところで“ピンポンパンポーン♪”と校内放送のお決まりの音が流れた。
「…1年B組、紺乃真澄、繰り返す、1年B組、紺乃真澄。至急、職員室へ来い。」
『…は?』
有無を言わせぬ担任の声に、部屋隅に設置されているスピーカーに振り返る。
『…何かしたっけ?ι』
心当たりを探るが、とっくに解決した鍵の件ぐらいしか検討が付かない…ι
私は萎える気持ちを抑えずに、やる気ゼロのまま職員室へと歩き出した。