第6章 帰り道2
「──それより、一つ気になってたんだけど…」
火神君は話題を変えると改めて黒子君を見据えた。
「そもそもお前も、幻の6人目なんて言われるぐらいだろ。何で他の5人みてーに、名の知れた強豪校に行かねーんだ。お前がバスケやるのには…なんか理由があんじゃねーの?」
心理を見抜こうとしている瞳は、試合時と同じ色をしていた。
一瞬の間。
黒子君は無表情で火神君を見つめる。
「…僕がいた中学校はバスケ強かったんですけど、そこには唯一無二の基本理念がありました。」
それは──、
“勝つことが全て”
「その為に必要だったのはチームワークなどでは無く、ただ“キセキの世代”が圧倒的個人技を行使するだけのバスケット。…それが最強だった。」
黒子君は手にしていたシェイクを机に置く。
その際に伏せ目がちになった瞳は光が無く、遠い過去を見ているように思えた。
“そこに“チーム”はなかった”
「…5人は肯定してたけど、僕には…何か大切なものが欠落してる気がしたんです。」
黒子君を通して、“キセキ”と呼ばれる友人達を思い浮かべる。
何でも見ただけで、そつなくこなす“馬鹿”。
目的の為なら無駄な努力も惜しまない“変人”。
妄想癖で突進形の“世話焼き”。
苦労を知らず、人の心をへし折る“甘えん坊”。
バスケと繋がりの無かった私から見ても、あくが強く、プライドの塊のような人ばかり。
黒子君のスタイルは連携プレーだ。
試合中に個人プレイされて点数稼げるなら…最終的に必要とされなくなるだろう。
それこそ、幻の6人目なんて…
名ばかりに。
記録に残らなかった彼は何を思い…
“彼ら”と共に居たのだろうか。