第5章 屋上
“俺は●賊王になる!”的な勢いで、宣言を終えた火神君は、スッキリした顔でフェンスから降りた。
満足気に口元を緩めていているリコ先輩を見て、私は火神君に羨望の眼差しを向けた。
(いーな…。)
私も男だったなら…、等と考えたが…
運動神経がそこそこ程度の自分が頑張った所で火神君のようには成れはしない。
寧ろ、私の場合“リコ先輩の恋人候補です!!”とか言って日向先輩を逆撫でし、部の空気を乱すに違いないし…、
そもそも、男だったなら“あの日”の出会いも無くなり…
リコ先輩と関わる事は無かっただろう。
なら、やっぱり今の自分が頑張るしか無いワケで…
皆と同じ舞台に立つ為には、今此処で気持ちで負けるわけにはいかないのだ。
だから、
(ハァ…人前に立つのは嫌だなぁ…)
とか、思っている場合では無い。
“全てはリコ先輩の為!!”
やっと、思考が纏まった所で、一つ気になる事が出てきた。
『カントク、質問です。』
「何?」
『私も全裸ですか?』
(((ΣΣぶっ!!?///)))
「あー、そーなるけど…不満?」
『そぅ…ですね。一応、嫁入り前なので。』
(((Σ切実だけど、そーゆー問題ィ!!?ι)))
「んー、なら下着にしましょう!男共が全裸なだけに、これ以上は負けてあげれないわ!!」
下着かぁ…。
せめて水着にまで負けて頂きたかったんですけどねー。
『…仕方無い、か。』
(((ΣΣ了承しちゃうのーッ!!?///ι)))
『カントク、そん時の為に保険だけかけても良いですか?』
「保険?」
『もし達成できなかった場合、野郎共は私の勝負下着を拝む事になるんです。バスケ部員の誰かが責任とってくれなきゃ、私の将来が保証されず、割に合いません。…だから、その時は──、』
私はくるっと振り返り、その場にいる皆に挑戦的に微笑んだ。
『“お嫁”にして下さいね?』
フェンスに近付き、予め持ってきていた拡声器にスイッチを入れる。
『──1年B組、紺乃真澄。カントクや選手達に、私の高校生活全てを捧げる覚悟でサポートし、チームを日本一にします!』