第3章 帰り道1
街灯の明かりを頼りに、真っ直ぐ駆けていくと“カズ君”は薬局前にあるガードレールに腰掛けていた。
どうやら向こうも早くから気が付き、気を使って、此処で待っていくれたようだ。
足早に近付いて行くと、丁度耳に付けていたイヤホンを外し、コードをiPodに巻きつけてポケットしまう所だった。
『ごめん。遅くなって。』
「いーよ。面倒臭がりな真澄ちゃんが少しの距離でも、走ってきてくれたわけだし?」
カズ君は口を尖らせ、じっとりとした目で私を見る。
「オマケに、どこの馬の骨が解らない男(ヤツ)2人と一緒にマジバに行って、俺との約束を電話掛けるまで忘れてたなんて、全~然、全く、気にしてねーから。」
『ぃゃ、ソレ全然気にしてるから。つーか、暗くて距離もあったのに…よく見えたね?』
「俺を誰だと思ってんの?」
カズ君はニヤリと口端を上げた。
“俺は何でもお見通しだぜ?”ってか?
まぁ、私が見えてたんだから当たり前、か。
『和成サマは、目“だけ”は良ろしいもんねー?』
「Σ“だけ”って!?何でソコだけ強調してんの!?何年も幼なじみで一緒に居んのに“顔も頭も頗る宜しい”カズ君の魅力が何で真澄ちゃんには解かんないの!?これでも中学の卒業式には、後輩やらクラスの女子達に惜しまれて告発のラッシュだってあったつーのに!」
ぷうっと頬を膨らませるカズ君。
うん、確かにカズ君はイケメンだよ。
ぷっくり膨らんだ顔が、何故か可愛いく見えるんだから。
認めてやるさ。
けど私はソレに対し、ブスッと指を突き立てて潰す。
態と、赤く痕がつくように“強く”。
だって…
『ウザィ。』
「酷ッ!!つーかΣΣ痛い!!ちょ、ぐりぐり指で突き刺すの止めてくんない!?ι」
『友達を罵った罰。』
「ちぇー。遅れて来ておいてその態度かよ。」
『謝ったし。』
「全く、いい加減そのツレナイ性格直せよなー。」
『余計なお世話。』
「反抗期か!!」
『カズ君だけだよ?』
「何だよ、その要らねー特別感は。ハァ…ま、いいや。腹へったし、早く帰ろーぜ。」
立ち上がると、カズ君はポケットに入れていた手を出して「ん。」と手を差し出した。
私はその手を躊躇無く握る。
『…迎えに来てくれてありがと。』
カズ君は猫のように満足げに笑うと、私の手を引いて家に向かって歩き出した。