第3章 帰り道1
マジバを出ると、宵闇が空を覆って星がでていた。
私を真ん中に、左が黒子君、右に火神君と、街灯に照らされる道を凸凹な三人が並んで歩く。
道中、話題になったのは勿論バスケの話。
火神君がキセキ世代の“強さ”について黒子君に尋ねたのが切っ掛けだった。
“今、やればどうなる?”
その問に“瞬殺されます”と答えると、黒子君はキセキ世代の天才五人が、それぞれ違う強豪校に進学した事を話した。
“その中の何処かが頂点に立つ”
それ程強いのだと物語る。
すると、突然笑い出した火神君は…
「そいつら全員ぶっ倒して日本一になってやる!」
と、目をギラつかせ闘志を燃やした。
挑戦的な目をする彼に、強気な先輩達の姿がダブって見えた。
「無理だと思います。」
「Σぅおいっ!!!」
出端を挫く黒子君。
「潜在能力だけならわかりません。でも、今の完成度では彼らの足下にも及ばない。
──“一人では”ムリです。」
黒子君は私達より先に数歩前に出ると歩みを止め、振り向く。
「…僕も決めました。」
彼は曇りの無い瞳で真っ直ぐ火神君を見上げた。
「僕は影(脇役)だ。…でも影は光が強いほど濃くなり、光の白さを際立たせる。
光(主役)の影として僕も君(主役)を日本一にする。」
サァ…と風が背後から通り抜けると木々を揺らし、淡い色の花びらが何枚も円を描き、宙に舞っていく。
それを追って見上げれば、南の空にひときわ“光輝くもの”を見つけた。
『なら、私は…空気(端役)にでもなろうか。』
「「…?」」
『星が“そう”であるように“空気”が澄んでいれば、光はより一層輝くもの。…そうすれば、“一番星”以外の淡い光の粒だって輝き、空に揃えば…“影”が線を結び“星座”となる。』
──あの“シリウス”のように。