第1章 誠凜高校入学
『リコ先輩!』
「え?真澄?」
『お久しぶりです!約束通り、マネージャーに成る為、誠凜高校入学しました!』
走って駆け寄れば先輩は「本当に誠凜へ来るなんて律儀ねぇ。」と、やや呆れ気味に笑った。
『当たり前です!助けて貰った恩があるのに!それに…私自信が先輩に会いたかったから…迷惑でしたか?』
「迷惑なわけ無いでしょ!私も会えて嬉しいもの!!でも、ここに来た以上、こき使っちゃうわよ?覚悟はいいわね?」
『勿論!!』
「じゃぁ、早速ここに名前と学籍番号を書いたら、マネージャーとして隣に座ってて。」
『はい!』
ウキウキしながら先輩の隣の席へと腰掛けると、此処まで連れて来てくれた青年と目が合った。
(ぁ、忘れてた。確か彼も此処が目的地だったけ?)
横目にリコ先輩の様子を窺うと「ひーふー…今10人目か。もーちょい欲しいかなー」と、書類に目を通している。
(コレくらいなら私でも出来るし、先輩を煩わせるまでもないか。)
私は机に置かれている用紙を一枚取ると、ペンと一緒に彼の前へと差し出す。
『さっきはありがとう。私、人混み苦手で…』
「いえ。紺乃さんが、人混みが苦手なのは知ってましたし…それに、あのままだと此処まで辿り着けなさそうだったので、その…失礼して手を借りました。すみません。」
“知っていた”と告げる言葉に疑問を抱いたが、それよりもお礼が先だと判断し、不安気にしている彼に笑い掛ける。
『“手を借りました”って、それはこっちの台詞。此処まで手を引っ張ってくれてありがとう。本当に助かった。』
「──っ、いいえ。」
どうやら気持ちは伝わったらしい。
相変わらず無表情だが、纏う空気が柔らかくなった。
無愛想な自分が言うのも何だが、彼を見ていると「綺麗な顔立ちなんだから笑えばいいのに…」なんて思ってしまう。
『じゃ、コレに名前と学籍番号を書いて。それから……ん?』
急に影が差し、手元が暗くなる。
見上げると、虎を内に秘めているような迫力のある青年が、猫口の先輩の襟を掴んで立っていた。
「───バスケ部ってここか?」