第2章 幻の6人目
──放課後、in体育館。
「5対5のミニゲームやろう!1年対2年で。」
雨でロードが無くなり、余った時間を1年の実力を見ることにしたカントク。
得点板を出し、個々にゼッケンを渡しに行くと1年の緊張が伺えた。
「センパイと試合って…!」
「覚えてるか?入部説明の時言ていた去年の成績…“去年一年だけで決勝リーグまで行ってる”って…!!」
「マジで…!?フツーじゃねぇぞソレ…」
冷や汗やら生唾を飲む彼らは、明らかに萎縮していた。
“どーしたものか”と考えを巡らせていると火神君がやってきて…
「ビビるとこじゃねー。相手は弱いより強い方が良いに決まってんだろ!行くぞ!!」
と、私の手元にあったゼッケンを取り、メンバーを引っ張ていった。
(…どうやら朝の言葉が効いたみたいね。)
『──本当にアンタ、何様のつもりなの?人を見下げるのも大概にしろ。』
雨の中、必要以上に冷たく言い放つ。
『確かに、現実は生易しくは無い。綺麗事だけでは通らな無い程、実力のある選手は存在する。けど、私はその人達全てが才能に恵まれた天才だったとは思わない。一握りの天才を超える為に努力をして力を付けた人は沢山いるもの。だからこそ、自分の限界は自分で決めるものであって、他人のアンタが決めていいものじゃない。』
神妙な面持ちで私を見下ろしている火神君。
その目を射るように見返し、リコ先輩や日向先輩達を想う。
私を助けてくれた“あの日”。
先輩達は言っていた。
先輩達の作り上げてきたバスケの戦型は、
“チームバスケット”だって。
『──そして、』
もう一つ、私は“聞いてる”。
『火神君がどう思うかは勝手だけど…黒子君は紛れもなく帝光中のバスケ部だし、努力して一軍に上がった選手だよ。』
だって彼は…
“自分を犠牲にしてチームプレイを優先してた”って。
駄犬からの情報だけど。
『誠凜バスケ部に所属している以上、彼は仲間。全国目指す為には必ず必要になっくる選手だよ。バスケはね、選手、監督、マネージャーにベンチと、役割を担ってこそ“チーム”だと思うの。もし、その和を乱す事があるなら、私はアンタを許さない。』
手元に残った一枚のゼッケン。
辺りを見回し黒子君を見つけると、私はゼッケンを持って近付いた。
『君の実力買ってんだから、負けたら承知無いからね?』