第1章 秋来にけり耳を訪ねて枕の風
江戸の地に足をつけたのは随分と久しぶりだ。
長く城に幽閉され外に出ることもままならなかった。首魁が死に外へ出てこれた頃には4年の月日が経っていた。
名を吉田吾妻。齢22にして背は5尺程と小柄で細身。白き肌に黒髪、金色の目が丁度隠れてしまうくらいに伸びた前髪が彼女の表情を一層分からなくさせる。赤い絞りの着物に黒い帯、明るい灰黄色の羽織り。
攘夷戦争終戦後、長く天道衆の元幽閉される。
出生不明、3つの時に吉田松陽の元に迎えられ、後に来た銀髪の少年とともに育てられた。