第7章 役得
「万里ー置いてくぞー」
女子の群れの中にいる万里に平は声をかけた。
「お迎えがきちゃったからまた明日ね〜」
平の声に、万里はクラスの女子たちに微笑んで席を立った。
「え、もう帰っちゃうの〜?」
「ごめんね〜明日テストだから平を勉強させないと」
にっこり笑って、するりと輪を抜けた。
「平ちゃん、お待たせ♪」
「遅い!!」
「花島田たちは?」
平の周りにいるであろう二人の姿が見当たらない。
「あいつらクラス違うじゃん。昼飯食べて帰る約束したから下で待ってるだろ?」
早く早くとせかす平に続いて教室を出た。
「しっかし万里もついてないよな〜いきなりクラス委員なんて」
「平ちゃんと違って〜優秀だから〜」
ニヤニヤと平を見下ろして気が付く。
(こいつ、また背伸びたな)
「お前一言多いぞ!」
ぷう、と膨れる平をヘラヘラと笑ってかわす。
がしっ
「おっ?」
「でも、あんな美人と組めるのは役得だよな〜」
突然首にまわされた腕と声に横を見ると、恐らく同じクラスであろう男子がいた。
「えーと、誰だっけ?」
ぎりぎり顔は覚えていたが、名前を覚えていなかったため聞くと、ガクッと肩を落とした。
「何のために自己紹介やらせたんだよークラス委員」
「桐谷だろ?桐谷正人」
平の声に、顔を輝かせた。
「お!天野は覚えてくれてんじゃん」
「平でいーよ、平で。万里はどーせ女子の名前しか覚えてないよ」
「ひどいっ平ちゃん!私のことそんな風に思ってたの?!」
平にしなだれかかりながら、正人を見た。
「いやー悪い。で、桐谷くんはどうしたの?」
重い!と暴れる平を解放して尋ねた。
「お前らバスケやるんだろ?俺もバスケ好きでさ。今のうちから仲良くしとこうと思って」
そう言って、正人は笑った。
(学年に一人はいる爽やか青年ってとこだな)