第12章 優しさの意図
足早に教室に戻ると、平を探した。
後ろの方で男子何人かで集まってジュースを飲んでいた。
「天野くん」
真依の声に、平と一緒にいた全員が振り返った。
「なに?」
自分が声を掛けられると思っていなかったのか、平は少し驚いたような顔で答えた。
「申し訳ないんだけど、日下くんが委員の仕事でコピーとってるの手伝ってもらえない?私がご飯食べれるように、て先に帰してくれたから今一人でやってるの」
「万里が?わかった、すぐ行く!」
「ありがとう、職員室のコピー機のところにいるから」
笑顔でお礼を言うと、その場にいた平以外の全員が赤面した。
「おっけーおっけー!じゃあちょっと行ってくる!」
すぐに駆け出した平を、真依は慌てて呼び止めた。
「あ、待って!」
「っと、何?どーかした?」
「日下くんもお昼まだだから、この子も一緒に連れてって交代してあげて」
弁当を食べ終え、携帯でゲームをしていたあずさをの腕を引っ張った。
「え、何?」
びっくりしたように見上げるあずさに、真依は手を合わせて頼んだ。
「悪いんだけど、日下くんの仕事交代してあげて」
「おーわかった、日下どこ?」
あずさは立ち上がり、携帯をポケットにしまった。
「ありがと。職員室にいる。天野くんも行くから一緒に行ってきて」
「おっけ、天野行こ」
ひらひらと手を振り、あずさは平と連れ立って教室を出て行った。
(それにしても、天野くんってば私の笑顔をさらりと流してくれちゃって・・・可愛い顔して実は女慣れしてる?)