• テキストサイズ

変えて。変えられて。

第2章 日下万里


新入生挨拶を無事に終わらせ、真依は万里の後ろを歩き、席に戻った。

周りの視線が自分たちに集まっているのを感じる。

席に戻ると、隣に座っていた石川あずさがニヤニヤとした笑顔で囁いた。

「お疲れ、相変わらず注目されてんねぇ」

あずさの言葉に軽く肩をすくめ、何事もなかったかのように席についた。

注目されるのには慣れていたし、何より今回は注目が二分されている。
女子の注目は、日下万里に向けられていた。

頬を赤らめ、万里をチラチラ見ながらコソコソと喋っている子たちに、手を振る万里の姿が見える。

(日下万里、ねぇ・・・)



「容姿端麗成績優秀なんて嫌味なやつ、真依だけだと思ってたんだけどなー」

期待と退屈に満ちた入学式を終え、教室に戻る途中、あずさが突然呟いた。

「失礼ね、私が美人なのは私のせいじゃないわよ。成績優秀なのは私がちゃんと勉強してるからだし。嫌味じゃないわよーいたっ」

あずさの少し冷たい指が、真依の頬をつねった。

「ちょっとは謙遜しろよ」

「つねらなくたっていいでしょー。謙遜したらしたで、嫌味なやつ、ていうくせに」

自分の頬をさすりながら、あずさを軽く睨んだ。今のは結構痛かった。

「よくわかってんじゃん」

そう言って、あずさは笑った。
もう、と言って少し先に見えてきた教室に目を向ける。

新しい学校。新しい教室。新しいクラスメイト。
期待と不安が、心をいっぱいにする。

(でも、あずさと一緒だから大丈夫)

「・・・真依」

「なぁに?」

隣を見ると、あずさの凛とした横顔があった。

「楽しい高校生活にしよう」


あずさの言葉に、真依は顔を綻ばせた。


きっと、楽しい3年間になる。
/ 15ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp