第3章 クラス委員
真依は、呆然と黒板を見つめた。
クラス委員
・日下万里
・荻野真依
(何でいきなり決定?)
「じゃ、新入生代表のついでにクラス委員も頼むなー。後の委員は・・・めんどくせーな・・・まあ、後でクラス委員中心に適当に決めとけ」
そう言って担任の田中律子はチョークを置いた。
「え、先生。そういうのって推薦とか立候補じゃないの?」
万里が慌てて声をあげた。
「そんなめんどくせーことやってられっか。文句言わずにやれ」
『・・・・』
律子の口から出た言葉に、教室中が固まった。
男子19人、女子18人。
総勢37人からなる1年A組。
自薦でも他薦でもなく、担任教師の一存でクラス委員が決まった。
座っているのに目眩がした気がした。
経験上、この手の教師が担任だと仕事量が多いのを知っている。
隣に座るあずさを見ると、合掌された。
(・・・ま、仕方ないか)
真依は心の中でため息をついた。
「じゃあそういうわけだから。日下、荻野。後はよろしくー」
持っていた紙をひらひらと振り、教卓に置くと、律子は教室の隅にある椅子に座り読書を始めた。
(案の定丸投げ、しかも読書って・・・)
「はい」
ため息をつきそうになるのを堪え席を立った。
真依の返事を聞いて、万里も観念したように腰をあげた。
「・・・は~い」
教卓に置いてある紙を手に取る。
目を通すと、今日やるべきことと連絡事項が書いてあった。
すぐ後ろに立ち覗き込んできていた日下に、不自然にならないように紙を渡しながら一歩分離れた。
「これからよろしくね、日下くん」
(近い)
真依の動きに気がついたのか、日下はニヤリと笑い、左手で紙を受け取りながら右手を差し出した。
「こちらこそよろしくね、荻野さん」
要求に応えて、真依は右手を出した。
骨ばった大きな手に、そっと触れた。
(あいつら無駄に絵になるなー)
握手を交わす真依と万里を見ながら、あずさはくすりと笑った。