第1章 はじまり
「え、と。それでですね、山本隊ちょ……いえ、山本四席にして頂くお仕事なんですが」
おずおずと茶菓子と煎茶の入った湯飲みを差し出しながら、一人の女隊員がひきつる笑みを向けてくる。
それにやんわり笑顔で「呼び捨てでいいですよ」と返し、せっかくだしと煎れてもらったお茶に口をつけた。
確かこの人三席の……あー名前忘れたや。誰だっけ?
「……まぁそういう事で、今日は申し訳ないのですが書類整理のお手伝いをして頂けたら助かりますハイ」
本当に申し訳無いと言った様に深々と頭を垂れる彼女に、慌てて両手を振った。
「いやいや良いって何でもいってくれても。こっちこそうちのジジ……山本総隊長の奇行で迷惑かけてごめんっていうか。書類整理だろうがお茶汲みだろうが何でもやるぜ。あ、一番得意なのはドンパチだからそれでも別にいいけど」
「いえいえ虚退治等隊長であらせられる貴女にさせられません! 私が朽木隊長にお叱りを受けてしまいますわ」
「あ、そう……?」
てか今日から一週間はあんたの部下の四席、なんだけどな俺。
「でもなんかそんなよそよそしくされると反対に気を使うって言うか……さ」
「で、ですが七日間だけとは言え一番を背に抱く隊長殿にその様な扱いは……それに山本隊長は朽木隊長の……」
と、そう言いかけた彼女の言葉を遮る様にガラガラと小さな音と共に開かれた木製の扉に、俺は長椅子に腰掛けたまま上体だけを扉の方へと反した。
そこには今出廷して来たのであろう朽木の姿があった。奴は軽く俺に目配せると、何も言わずさっさと隊主室へと入っていってしまう。
「んだよあいつ、おはようございますくらい言えよな」
ムッと不機嫌にそう言い終わってハタリと口許を押さえる。
「あ……」
やべ、ここは奴の陣地だった……。