第1章 はじまり
“#翠#へ。
お主が一番隊の隊長になってからはや五ヶ月がたったが、今だ六番隊との共同任務を嫌がっているようじゃの。
そんな風では人の上に立つなど到底無理な話。
それではお主の為にもならぬじゃろうて。
なので、明日からお主に一週間の六番隊への移動を命ずる。七日の間に隊員並びに隊長と仲を育むのじゃ!
ああ、席はそれ相応の位を用意したからの。優しいじゃろ?
おじいちゃんより“
読み終えた瞬間これでもかって程高らかな奇声をあげたのは言うまでもなく……。
「ぬぁにが仲を育め、だ! 余計なお世話過ぎて涙がちょちょん切れるってんだバカジジイ! しかも隊長から席官とか降格してんじゃねーかよ!」
俺が六番隊隊長である朽木白哉とは犬猿の仲(相手は知らんが)だと言うことは護廷では(何故か新入隊員にさえも)知られた周知の事実だ。
そりゃ顔を合わせる度に喧嘩腰になってりゃ単細胞でない限りはわかるだろうけど。けど俺だって別に好きで喧嘩売ってる訳じゃないんだよ。ただあいつがあまりにも人を見下した態度をとるからムカついてムカついてムカついてだな。
まぁそれはただあいつが無愛想なだけで、別にバカにしてる訳じゃないってのは最近だがわかってきたんだよ俺だって。
「最近は前ほど突っ掛かってるつもりないんだけどなぁ」
小さく息をついて桜並木が連なる川縁へ腰を下ろし膝を抱えそうぼやく。
八番隊にいた時はそりゃもう顔を合わせりゃ睨み付けるは嫌味投げつけるはと散々喧嘩を吹っ掛けたもんだ。まぁ見事に完全無視だったけど。
けど、多分。じっちゃんのいう“仲を育むのじゃ“ってのはまた別の意味な気がしてならない。
「まだ諦めてないもんなぁじっちゃん」
じっちゃんが俺に見合い話を持ち込んで来たのはつい最近の話だ。まぁまがりなりにも貴族の位に属する山本家。その家の娘である俺だってその内見合い話の一つや二つ転がり込んでくるであろう事は予測できていたし覚悟していた。
けど、だがしかしだ。
偽造結婚なんつーバカげた話が来るなんて、どうして予測出来ただろうか。
そう、あろう事かうちのバカジジイは孫娘に見合いは見合いでも偽造の見合い話を持ち込んで来やがったんだ。