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初恋〜朽木白哉夢〜

第1章 はじまり



 季節は春。

 この時期は出会いや別れの季節。学生であれば、一年過ごして来た学級や学友と別れ、新しい出会いと進級に心を踊らせる。

 はず、なんだけどな。普通。







 桜が咲き綻ぶ道を一人の女が暗い表情でトボトボと歩いていた。
 青白い顔は生気を失い、今にも倒れてしまいそうな……いや、寧ろ倒れてしまいたい。ええもう今すぐにでも喜んで!


「あり得ない……」


 乾ききった唇でポツリと呟いて、手にもった紙をぐしゃりっと握り潰す。そして次第にわなわなと震え始めた掌を振り上げると、握り潰した紙を地へと投げつけ思いっきり踏み潰した。


「移動? この俺が? 六番隊四席? ふざっけんなクソジジイ!」


 ふんっふんっと鼻息荒く今朝渡されたばかりの移動命令の書類を踏みつ付ける。土にまみれ所々が破れたくらいでようやっと足をどけ、止めとばかりに脇を流れる川へと蹴り落とした。

 去年、紅葉が青葉から次第に赤みを帯始めた頃に俺は一番隊の隊長へ昇進をした。50年前はやれお荷物だの邪魔物だと蔑まれたただの平隊員だった俺もやれば出来るのだよとほくそ笑んだのも束の間。
 人事異動や新入隊員の出迎え準備などで他隊のお手伝いにバタバタと忙しなく走り回る俺に届けられた一枚の文。
 それは俺の祖父であり上司である護廷十三番隊の総隊長、山本元柳斎重國からだった。
 一応身内だと言っても上司だし、どんな難易な任務を寄越したんだと神妙に文をひらいて読み上げた俺だけど。

 
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