第3章 友の死
『お前と修兵は剣八じゃなくて本名で呼んでくれな。なんかお前らに剣八隊長なんて呼ばれたらむづ痒い気になんだよ』
十一番隊隊長の就任を祝って久しぶりに修兵と俺と奴で集まった時。奴は少しはにかんだ様子でそう言っていたのを思い出す。
『俺らだって気持ち悪いってんだよ。な? #翠#」
『…………』
『あん? どうしたんだよそんな不貞腐れた顔して』
『別に』
ぷいっとそっぽを向けば、樹が少し幼さの残る顔に笑みをのせながらガシガシと俺の頭を撫でる。
『ほっとけほっとけ修兵。こいつはあれだ、オレがさっさと上に行ったのが気にくわないのさ』
『は?』
『一緒に真央霊術院に入って、かたや俺は四年で首席卒院。こいつは今年二期のやり直し。これだけ差が開きゃあそりゃ不貞腐れんだろ』
『はぁ? お前またかよ』
『うるせーよ! お前は知らねえだろーがな、死神になるってのはそりゃもう大変なんだぞ!』
『普通にしてりゃ七期で卒院出来るんだけどな。こいつはほら、一言多いから』
『ああ、確かに』
『上級にたてつくは先生には喧嘩腰で話すは。うまく立ち回るってのをもっと覚えたらどうだ?』
『あれはあいつらが先にっ……』
『そーれーでーも。結局は実力主義だからな。力のない奴が吠えたってただの負け犬だ。だろ?』
『まぁ、そうだよな。流魂街じゃ普通だ』
『てめっ』
成程と頷く修兵の胸ぐらを掴み上げギロリと睨み付けると、パシンッと甲を樹の掌が叩く。
『ほらそれ。そうやってすぐ人様の胸ぐら掴むのやめろっつったろ。それでこないだ怒られたばっかだろお前』
『これは俺流挨拶なの!』
『ハイハイ。そう言や知ってるか修兵?』
『あ?』
『こいつさこないだ山本のじーさんと口喧嘩したとき、なんとまぁ廻りに隊長だのが集まってる席でじーさんの首根っこ掴まえて怒鳴りあってんの。もう隊長も副隊長らも顔面蒼白』
『うわぁ……』
『仮にも上司だぜ? 護廷十三番隊を率いる総隊長の首根っこ掴んでクソジジイだの髭じじいだの罵れんのは世の中広しと言えどこいつだけだって』
ケタケタと笑い声をもらしながらも俺の頭をガシガシ撫でる手をうざった気に払うと、少しだけ奴との間に距離をとりいじけたように脚を抱き抱える。