第2章 昔馴染
「ふーん、ここが一番隊か」
二番隊から一番隊に渡る渡り廊を歩きながら修兵が感慨もなく呟く。
「まぁ作りは他隊の隊舎とあんま変わんないかもな。あぁけど他隊と違うのは静かなとこかな」
「静か? お前がいて静かなんて有り得ねぇだろ」
意地悪げに笑って言ってくる修兵の横腹に肘鉄を食らわせながら「だって」と話を続ける。
「この隊舎にゃ俺と佰荒以外いないからな」
「は? 何でだよ」
「そりゃ一度おとり潰しを食らった隊だからな。隊員は今のとこ隊長である俺だけ。副隊長は不在。席官も平隊員も不在」
昔。まだ俺が死神になる以前の話だ。
俺には兄が一人いた。名前は山本喜助。護廷では母の旧姓である浦原を使っていた。
元々二番隊の副隊長だった兄は、俺が数えで15の歳になる前の年に一番隊隊長へ昇格した。
じっちゃんは護廷十三番隊を統べる総隊長。兄はエリートだけが配属されると言われる一番隊の隊長。そんな彼らに俺は幼心にも尊敬の念を抱いたものだ。