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気まぐれな君

第1章 ネコ


「ご主人〜、今もう22時ですよぉ?流石にお腹空きましたよぉ」
その声に、目を覚ました。
懐かしい夢を見た。
彼女と、話したあの日。
我ながら、そんな簡単に忘れられないものなんだなと思った。
その時、思った事がもう一つあった。
俺を起こしたのは誰だ?
俺は一人暮らしで、今はテレビだってついてない。
近所の公園で遊んでいる子供の声かと思ったが、22時と言った。夜に子供が公園で遊んでるわけがない。
枕の横を見ると、ルルが大きい瞳を爛々とさせていた。
(まさか、俺は猫と意思疎通が出来るのか?)
一瞬そんな馬鹿なと思った矢先、ルルは毛繕いをしながら俺の方に向いた。
「ご主人起きるの遅いです!起きなかったら自分の毛を食べようかとも考えたっスよ!」
ルルは怒りながら俺に「飯をくれ!」と言い放った。
待て、目の前にいる猫が喋っているではないか。
俺は目を疑った。何度も両目を擦り、もう一度目の前のルルを見る。
「ご主人。そんなに擦ると目の病気にかかる事があるんスよ?」
……あ、これは夢だ。
そう思い、再び布団に潜り込み、寝る体勢に入る。
「ちょちょ!ちょっとご主人!寝ないでくださいよ!ご飯は!?」
寝れば翌朝にはきっと夢だと分かるはずだ。
「ごーしゅーじーん!!」
ガリッと、ルルは俺の頬を引っ掻いた。
「痛っ!!なにすんだよルル!」
「ご主人がご飯くれないから!!」
会話が出来るということは、これは現実だ。夢じゃない。
どうしていきなり喋ることが出来たのか、謎だった。
「あの、ルル?」
「なんすか?」
やはり返事が返ってきた。
玩具……ではないよな。試しにルルを持ち上げ、スイッチがないか確認する。
「ちょ……ご主人。あちこち見られると恥ずかしいッス。私照れますよ」
触感、毛ざわり、お腹のもふもふ、尻尾を握るとフシャーと怒る、頭をなでなでしたらゴロゴロと甘える。
間違いなく玩具ではなかった。
「なあ、なんでお前、喋れるの?」
俺の問いかけに、ルルは神妙な顔をした。
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