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気まぐれな君

第1章 ネコ


「それがですねぇ、私にも分からないんすよ。気付いたら喋れて、直感ですが、貴方を支えよと言う天命的なものを感じたんスよね」
「俺を支える?天命?」
あまりにも非現実な事が起こっているのに、また訳のわからないことを言ってきた。
頭がこんがらがってる。どういう事なのか。
「と・に・か・く!!ご主人!!ご飯!!」
「あ、ああ。分かった」
そう言ったものの、猫缶を一個しか買っていなかったため、猫のご飯は無かった。
「……これ食えるか?」
俺があげたのは、棚に置いてあった海苔だった。
「ええええ、こんな薄っぺらいの食べるんすか?」
「まあ、加工食品だからな」
「かこうしょくひん?」
「うーん、なんて説明……ってか食べたら分かる」
「はぁ、分かりました」
渋々ルルは海苔に齧り付く。
もぐもぐと咀嚼しているうちに、ルルは目を開き、顔がパァーと明るくなった。
「ご主人!!!これ!!超美味いじゃないすか!!!こんな食べ物が世の中にあったなんて……私の人生半分も損してます……」
そんなに衝撃を受ける食べ物なのかと思ったが、そもそも猫に海苔をあげても大丈夫なのかを調べなければ。
「明日、キャットフードと猫缶を買ってくるから」
「きゃっとふーど?なんすかソレ」
「お前……知らないのか?」
「生まれて私はすぐ捨てられたものですから。今まで食べてきたものといえば、時々親切にしてくれる人が猫缶をくれるくらいっすからね」
聞いてはいけなかったのかと気にしていたが、ルルは「まあでも、ご主人に出会えて私は幸せっすよ」と言ってくれた。
「そういえばルルさ」
「なんすか?」
「ずっと思ってたんだけど、お前のその【天命】って何だ?」
口調も気になったが、それ以上に気になっていた。
「うーん……、それがですね、私にも分からないんす」
分らないのに【天命】と言っていたのか。
「確かに、私は言われたんすよ。あの人を守ってって」
「言われた?誰に?」
「それが分からないんす。私の記憶の殆どがないんすから」
満腹になったのか、ルルは大きな伸びと欠伸をし、丸まった。
「その話は明日しましょ……私…もう眠いっすぅ……」
そのまま寝てしまった。
くっ、そうだった。猫は気まぐれな性格だとよくテレビで言っていたな。
話は気になったが、明日は夜からバイトがあるから、俺もそのまま布団に潜り込んで寝てしまった。
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