第2章 魔導師
マギ…?僕はマギなのか?そもそもマギってなんなんだろう。
聞いたことあるはずなのに、そんな遠くない昔に。
「僕は…何も覚えてないし、分からないんだ」
そう言うとヤムライハは哀しそうな目をして僕の頭にぽんっと手を置いた。温かい手だった。大切な誰かに触れられてるみたいで心地よくて。
「マギとは何なのか教えてくれませんか?僕は多分大切なことを忘れてる」
「あぁ、分かった。けどまず早く体調を戻すんだ。話はそれからにしよう」
シンドバッドは立ち上がって部屋の出口の方へ歩いて行った。それを見た他の人たちもシンドバッドにつづく。
扉に差し掛かった時、シンドバッドは足を止めた。
「腹が減ったらここにいる誰かに言ってくれ。見たところキミはまだ子供のようだからな。食べないと大きくならないぞ」
ぐ〜〜っとお腹が鳴る。そういえば何も食べてないっけ。まともに話して数分でこんなことまで分かるなんて、あの人は何者なんだろう。
「えっと、ありがとう。シンドバッド」
「シンでいいさ。その代わりキミのことも後でちゃんと聞かせてくれよな」
そう言い切ってシンドバッ…シンは部屋を出て行った。出てすぐに「ジャーファル、飯の用意をしてやれ」と言うシンの声が聞こえた。
静かになった部屋。すごく落ち着く。前もこうやって静かなところで1人で過ごしたような。
僕の周りに集まった“ルフ”と呼ばれる存在に僕は語りかける。
「キミたちは僕が何なのか知ってるの?僕は“マギ”なの?」
飛び回ってるだけで答えてくれるはずもない。けれどそんなことが僕を落ち着かせてる気がするんだ。
ぼーっと外を眺めていると、コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。
「マヤ、食事の準備ができましたが食べられますか?」
僕はドアを少し開けて、僕の一回りくらい大きいお兄さんに向かって頷いた。