第2章 魔導師
ジャーファルは部屋に入ってきて皿を机に置いた。温かそうな湯気がふわ〜っと飛んでいて食欲をそそる。
「食べていいの?」
待っている時間も焦ったく感じて、まだ支度をしているジャーファルにそう尋ねた。
にこっと笑って『いいですよ』と言ったのを聞いてスプーンを取る。見たことのない料理でいっぱいなのに不安とかためらいとか一切なく、スープを一口口に入れた。
「おいしい?」
僕は頷きながら一口、また一口とスープを口に運ぶ。
あったかくて懐かしい味。僕の目からぽつりぽつりと涙が落ちた。
なんで、なんでだろう。すごく、温かい。幸せの味がする。
「マヤ、大丈夫ですか!?」
「あったかいね…すごく…」
涙が溢れて止まらない。この味を知らないはずなのに、こんな味を求めていたかのよう。
* * *
5分も経たないうちに僕は全て平らげた。その間ジャーファルは優しい笑顔でそっとしておいてくれた。
「落ちつきましたか?お口に合ったようでよかったです」
「ありがとう…ジャーファル…」
ぽんぽんと頭を軽く撫でて皿を持って部屋から出て行った。
ジャーファルが出て行ったのを見て、僕も部屋の外へ出ることにした。ただの好奇心のようなものだ。何かを思い出すかもしれないし、外へ出たかった。
…だけだったのにどこに行ったらいいのか分からない。迷ったってやつなのかな?これは。
適当に歩き回わっていると少し大きめの扉を見つけた。そこからはたくさんの人の声が聞こえる。
「わぁ…」
扉の先にはキラキラとした物たち。人でいっぱいになったその部屋は新しい世界に来たみたいだった。
「シンドリア商会へようこそ!気に入った物がありましたらぜひお声をお掛け下さい!!」
「シンドバッドだ…」
様々な人たちと話をするシンドバッドを見つけて少し心は落ち着いたもののわくわくとした気持ちは収まらなかった。
ふらふら〜っと歩いて誰かにぶつかったりしてもあまり気にならなくて。色々な世界を一気に冒険しているような気分だった。