Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第5章 あい・らぶ・ゆー!《鎌先 靖志》
【蒼井 side】
今、何て?
別れ、よう?
『なんで………っ』
鎌先が少し出て行った後、へたりと床に座り込んでしまった。訳が分かんない。頭が、パンクしてしまいそうだ。
「あちゃー、俺やり過ぎましたねー」
「彼氏の前であれは無いわー」
彼氏の前、アレ?
あ、キス…
『でも、ほっぺた…』
「あのなぁ蒼井、場所はどうでもいいんだよ。大事なのは、お前が他の男にキスしたって事実なの。それがアイツをそうさせた」
茂庭の言葉にハッとなる。
私、何した…?
今まで、何してたの?
ちゃんとありがとうって言ってないよ。
ちゃんとゴメンって言ってないよ。
ちゃんと、大好きって、言ってないよ…
『私、行ってくる!』
「うぇ、ちょお!」
二口の制止も聞かず、走り出した。体育館、中庭、グラウンド。探してみるけどどこにも彼の姿は無い。あんな図体してるからすぐ見付かると思ったのに。
走り続けてるから、呼吸が苦しい。酸素が足りない。でも1番苦しいのは、私をいっつも呼んでた、アイツなんだ。
なりふりなんて、構ってられない。あごに伝う汗を手の甲で拭い、走り出した。すれ違う人に訊いてみるけど、見てないって人ばっか。
お願い、どこにいるの…?
そうだ、1つだけ見てない場所がある。校舎裏。そこにいなかったら、最悪駅まで探してみよう。どうしても、言いたいんだ。
校舎裏に辿り着くと、あの金髪頭が目に入った。うずくまって嗚咽を漏らすその背中。
『鎌先ぃ………』
「な、海宙っ!?」
驚く彼に、まっしぐら。むぎゅっと飛び付けば、鎌先は勢いに耐えきれず、後ろに尻餅を突いた。
『ゴメン……ごめ、ごめ、なさいぃ!』
気が付いたときには、彼の胸に顔を埋め、ぼろぼろ泣いていた。