Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第5章 あい・らぶ・ゆー!《鎌先 靖志》
【鎌先 side】
『さっさと済ますからね』
「へいへい」
Tシャツの裾を掴んで背伸びする彼女。でもその相手は俺じゃなくて、二口。
ちゅ…
控えめな音をたて、二口の頬に海宙がキスをした。
「ぷ、先輩、真っ赤っスよ?」
『うっさい///』
プイとそっぽを向く彼女を、二口がつっつく。そんな風に言い合う様子は、俺といるよりも楽しそうで。俺と並ぶよりも、よっぽどカレカノらしくて、お似合いだった。
ズキリ、チクリ、ズキン…
何だコレ。
痛ぇ、
心臓が、痛ぇ。
「…い、おい鎌先。顔ひどいぞ」
「お、おう、茂庭か…」
呼ばれてハッとする。そんなにひどい顔、してたのか。きゃっきゃと楽しそうな声に目を遣ると、海宙は二口に青根も混ざって楽しそうに笑っている。
ああ、そうか。
俺じゃなくて、二口が好きなんだな。
「海宙」
『何、鎌先?』
「俺たち、別れよう」
『…えっ………』
目を丸くする彼女の頭をぽんと叩く。
「今まで、ありがとうな…」
震えそうになる声をどうにか抑え、部室を後にした。部室を出て一気に校舎裏まで走った。立ち止まって、地面を見詰める。1つ、2つと雫がシミを作った。
ああ、
こんなにも、
彼女が好きだったんだな。