Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第40章 最高の誕生日《澤村 大地》
翌日、どうしても不安を抑えられず、思いきってスガに電話してみた。海宙はスガのお姉さんだから、何か知ってるかもしれない。
「…もしもし、スガ?」
《おお、大地!久し振りだなぁ!》
久し振りに聞くスガの声は、何1つ変わっていなくて。それで、安心した。
「実は、海宙のことなんだけどな…」
《え、姉ちゃんなんかやらかした!?》
「いや、やらかしたっていうか…様子がなんか変な気がして。スガに訊くのもどうかとおもったんだけど、何か聞いてるか?」
《んー………》
しばらくの沈黙の後に、スガは言った。
《ごめん大地、俺知ってる》
「そうなのか!?なら…」
《いや、言いたいのはめっちゃあるけど、姉ちゃんに口止めされててさぁ…悪い》
逆鱗に触れたら俺死ぬからさぁ…とボヤくスガ。そう言われれば、俺は黙って頷くしかなく、礼を伝えて電話を切った。
結局、謎は深まるばかりだった。
そんなこんなで数日が過ぎ、気が付けば大晦日になっていた。
『大地くーん、何か食べたいものはある?』
「いや、特には…」
『もー、いっつも我慢してるんだから。誕生
日くらいワガママ言ったっていいんだよ?』
「あ、そうか。俺、誕生日だ…」
なんてこった。自分の誕生日すら忘れているなんて。ヘタしたら正月休みすら返上の事態で、祝うどころじゃなかったんだ。
『はい。誕生日おめでとう』
冷蔵庫から海宙が取り出したのは、イチゴのたくさんのったケーキ。ん、クリームの感じといい、チョコプレートといい、手作り感が満載。もしかして…
「…海宙の手作り?」
『美味しさの保証はないけどね』
はにかむように言った海宙。コーヒー淹れなきゃだね、といそいそと台所に向かう海宙。その小さな背中を、後ろからそっと、抱きしめる。
『だ、大地くん…?』
「食べたい…」
『あ、ケーキ?』
「違う。海宙を、食べたい」
『…っ///』
くるっと振り返り、海宙は俺の胸板を押した。ゆっくりと見上げるその顔は、
その、顔は…
「海宙……?」
涙に濡れていた。