Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第40章 最高の誕生日《澤村 大地》
【大地 side】
最近、海宙の様子がおかしい。変によそよそしいというか、落ち着かないというか。
「海宙、何かあったのか?」
『何が?』
「いや、様子が変だから…」
『なんもないけど?』
「そうだよな、うん。なんか、ごめんな」
そんなやり取りを習に何度か。喧嘩したとかなら数日で終わるが、この状況は数日どころか2週間以上も続いた。
何か隠している。その予感が確信に変わったのは、クリスマスのことだった。
外で美味しいご飯を食べ、ちょっとお高いワインなんかも飲んで、ホロ酔いになった頃。
「…海宙」
『なぁに?』
「今日はホテルにでも泊まるか」
思いきって言ってみると、海宙ふにゃりと笑った。ああ、海宙のこの笑顔、愛しくて愛しくて堪らない。
頭をぽんと撫で、手を恋人繋ぎにして、夜の道を歩く。少し火照った頬に、冬の風が気持ちよかった。
「シャワー、どうしようか」
『あ…大地くん、先に入ってて?』
部屋に入り、コートを脱ぐと、海宙はそう言った。分かった、と頷いてシャワーを浴びる。はやる気持ちが行動に移るのか、いつもより早くに終わらせてしまった。
バスローブを着て部屋に戻ると、ベッドの上に海宙は座っていた。
「海宙……」
声を掛けようとして、躊躇する。
俺に背を向け、窓の外を眺める海宙。その背中が、不意に消えてしまいそうに見えた。まるで、手のひらに落ちて溶けてしまう、雪のように。
「海宙っ…!」
『大地、くん?』
もう、抱きしめていないといなくなってしまいそうで。離れていってしまいそうで。無我夢中で腕の中に閉じ込めた。
『どうしたの、何か、あった?』
「分からない。でも、海宙が…」
『私、が?』
「消えて、しまいそうで…」
抱きしめてみれば、より一層海宙が小さな存在に思えて。ぎゅっと、力を込めた。
「海宙……いい、か?」
そう問い掛けると、海宙は困ったように笑った。その笑みは、とても、儚くて。
『ごめんね…?』
最後に疑問符を付けられれば、俺にはもうどうしようもなくて。ただひたすらに、彼女を抱きしめて、温もりを感じて、夜を明かした。