Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第39章 ★Snow Magic 《大将 優》
"ごめん、ちょっと、お手洗い…"
そう言って席を立ったのは数分前のこと。
『ヤバい、飲みすぎたかも…』
若干、足取りが危うい。そして悩むべきは今回の合コンの内容。お互いの意思尊重の上に、オモチカエリしても言いということになっている。
『来るんじゃ、なかった』
スグくんがいないかな、という淡い期待がなかったワケじゃない。そもそも大学が同じかなんてこと、分からないのに。
『はぁ………戻ろ…』
ギィ、と戸を開けて席に戻ると、合コン会場というか、王様ゲーム会場と化していた。
「あの千智、これはいったい…?」
「原野君が大人数なんだしって言ってね。蒼井もやろうよ」
そうして強制参加。まだ一度も罰ゲームを受けてないけど、自分の番号を指名されないかと内心では怖い。こういうのは、苦手だ。
「じゃあ…3番が8番の膝に乗る!」
最悪だ。3番、私じゃないですか。
「あ、俺8ばーん。3番誰ですかー?」
『あの、私、です…』
おずおずと手を挙げる。8番だったのは、原野くんだった。ちょこん、と膝に乗る。あぐらをかいたその上に座っているので、後ろの原野くんが気になってしょうがない。
『重くない、ですか?』
「全然!むしろ軽いよ、海宙ちゃんご飯ちゃんと食べてるー?」
いつの間に名前呼びにシフトしたんだ。やっぱりこの人軽い人だ。苦手、かも。その後3回ほど王様ゲームをやったところで終了になった。膝に乗せられっぱなしだったけど。
「二次会は移動しまーす。抜ける人は原野くんか私に伝えてからにしてくださーい」
『千智、わ、私帰りた…』
「海宙ちゃん、2人で抜けない?」
そう言ったのは、原野くんで。周りの女子の目線が、刺さるように感じた。男性陣からは羨望の眼差しが遠慮なく刺さる。
どうして誰も、私を放ってくれないの。一人にしておいてほしいのに。私が会いたいのは、スグくんだけなのに。
「ほら、いこいこー!」
ぐいぐいと手を引かれる。口を開いて断ることもできず、ただ引かれるままに歩く。あぁ、もうお店の入り口だ。もういいや。もう、どうにでもなってしまえ。
「おい、あーっと……みそら…?」
そんな投げやりな私に、誰かが声を掛けた。
その声はとても、とても懐かしくて。
なぜだか、泣き出しそうになってしまった。