Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第38章 ☆世界一、君が好き。《及川 徹》
徹が日本に滞在できるのは2週間。そのうちの半分はバレーで潰れた。残り半分は自由にできるとのことだったけど、疲れている徹のためにも無理はしないように、と思った。
家でゴロゴロしたりとか、お弁当を持って近くの公園にピクニックに行ったりとか。もっとも、それらは天気と要相談の上だったけど。
自由行動最後の日の今日は、徹が日本に滞在できる最後の日でもあった。
『徹、今日は何したい?』
私は珈琲を飲みながら、フレンチトーストをかじる徹に問うと、じぃっと見詰め返される。心の奥の奥まで見透かしそうなその視線に、思わず顔が赤くなるのを感じる。
『と、徹…?』
「一日中海宙とイチャイチャしたい」
『いっ、い、イチャイチャ…///』
「今日が最後だから。海宙のこといっぱい感じてたいんだけど…どう?」
『ど、どうと言われましても…』
断れるわけ、ないですよねぇ…こういうのに関しては、私に拒否権はないし、むしろ徹にリードしてもらう感じだし。
"いっぱい感じてたい"という言葉通り、片手では数えきれないくらい抱かれた。優しく甘い言葉をかけられたり、激しくイイトコロを刺激されたり。すごく、気持ちよかった。
コレで最後ね、と徹が言い、終わりになったのは日付も変わる頃だった。出発はお昼だから、少しくらい遅くても平気らしい。
徹の腕の中、温もりを感じていると、不意に徹が口を開いた。
「俺さ、バレー好きなんだよね。小学生から始めて"天才セッター"なんて言われて。でもどんなに頑張っても、越えられない壁があったんだ。牛若とか、クソ生意気な後輩とか」
そっと、その言葉に耳を傾ける。
「バレーばっかの人生で、バレーしかない俺だったけど、初めて、バレーと同じくらい、バレーよりも大事なものができたんだ。それが、海宙なんだよね」
『徹…』
どんな口説き文句よりも、どんなに綺麗なバラの花束よりも、徹のその一言が、私にはとても嬉しかった。
『あ~あ、明日からまた一人かぁ…』
「俺も頑張るから、海宙も頑張って」
そんな徹の優しさに、少しだけ、調子に乗っちゃったかもしれない。次の一言で、徹の心をひどく傷つけてしまうことに、私は気付けなかった。
『うん…徹がずっと傍にいればいいのに。徹がバレー選手じゃなかったらなぁ…』