Volleyball Boys 《ハイキュー!!》
第38章 ☆世界一、君が好き。《及川 徹》
翌日、目が覚めたのはソファの上だった。慣れない場所で寝たせいで、全身が痛い。おまけに二日酔いで頭も痛い。起き上がるとぱさり、と毛布が落ちた。
『岩泉、かな…』
なんだかんだで、優しいんだから。それから急いでグループトークで謝ると、次々に気にしなくて良いという内容の返信が届いた。ただし、今度の焼き肉は私のおごりになった。
徹とのやり取りは、専らラインだった。でも向こうとこっちとじゃ8時間の時差があるし、ただでさえ徹は忙しいし、1日にやり取りできるのは、一言程度だった。
初めこそ寂しくて、夜にしくしく泣いたこともあったけど、年度末やら何やらで、気が付けば春になっていた。そして、迎えた6月。梅雨のど真ん中、カラリと晴れた今日は、徹の帰国日だ。
とびっきりオシャレして空港に向かう。勿論、岩泉たちも一緒に。国際線のロビーには、選手達の帰国を待っているであろうファンがずらりと並んでいる。
そこへイタリアからの飛行機が到着したとアナウンスがかかる。もう、すぐだ。あと少しで、徹に会える。
キャーッと黄色い歓声が聞こえた方を振り向くと、バレー男子の代表メンバーの姿。徹は?どこにいるの?必死になって探して、見付けた。鳶色の目の、愛しい人。
『とーるっ!』
「海宙っ!?」
警備員の制止を振り切って、徹に飛び付く。半年ぶりの徹、半年ぶりのハグ。精一杯抱きしめると、徹もぎゅうっと返す。
腕の中から見上げる徹は、少しだけ逞しくなったようだった。岩泉達を見付けると、手をブンブンと振った。子供らしいところは、相変わらず。
「海宙、出迎えありがとう。俺はこの後夜までミーティングあるからさ、岩ちゃん達と先、帰ってて」
こくりと頷き、腕を放す。他のメンバーや色んな人の視線に、今更ながら恥ずかしい。そして、大事なことを思い出す。
『あ、待って、徹』
「ん?」
『おかえ…』
「ストップ!」
言おうとした口を、徹の手が塞ぐ。モゴモゴしていると、徹はにこりと笑った。
「それは家の時にとっておいて。ね?」
大好きな優しい目に、何度も何度と頷いた。それから他のメンバーに軽く挨拶をし、徹たちが貸切りバスに乗り込むのを見送ってから、岩泉達と家に帰った。